詩歌紹介

吟者:小坂 永舟
2011年6月掲載

読み方

  • はるのうみ ひねもすのたり のたりかな

語意

     終日=一日中
     のたり=ゆるやかな波のようす

句意

 空はうららかに晴れわたって、春の海には波がゆるやかにうねりを描いては、一日中のたりのたりと寄せては返している。
 本古来の訓読みで一貫し、丸くやさしくまろやかな春の海の感じを、調(しらべ)によって理屈をこえてそのまま直接読者の心にうったえている。

季語

 春の海─春

出典

 「俳諧古選」

作者略伝

与謝蕪村 1716─1783

 姓は谷口、のち与謝と改め、芭蕉より約100年後に出た江戸中期の俳人・画家。
 摂津の国、毛馬(けま)村(現在の大阪市)に生まれ、江戸に出て其角(きかく)の門人に俳諧を学び名を知られたが、のち日本各地をめぐって放浪の旅を続けた。京の丹後与謝に落着いてからは、画家としても併せて文名は高くなり、おとろえかけていた俳諧に力を入れて天明俳諧の中心人物となった。作品には「新花摘(しんはなつみ)」「玉藻(たまも)集」などがある。

備考

 天明俳諧=芭蕉の死後俳諧がしだいに堕落(だらく)していったので明和・安永・天明の頃、特に天明期に蕉風の真の精神に帰れと主張し、俳風を革新しようと各地に起こった新興の俳諧をいい、特色は漢詩的、古典的、物語的、絵画的といわれるように浪漫的世界にあこがれるものであった。